優衣にいつもそっけない態度取っていたのも、素直になれないのも、全部。優衣に嫌われたくなかったからだ。曖昧な態度を取って、曖昧に過ごしていた。
 クラスメイトと仲良くなりたい。僕だってみんなみたいに楽しく一つの話題で盛り上がりたい。だけど、もし僕が声をかけて、その場をしらけさせてしまったら? そう思うと怖くて声をかけることが出来なかった。
 学校に行けなくなってから、ずっとモヤモヤしていた。このままでいいのか、って。それは将来に対する不安じゃなくて、“今”という時間を僕は心から楽しんでいないような気がして、どこか辛かった。だけど、それ以上に『また学校に行けなくなる』って思うことが怖かった。学校に一瞬でも行けたとして、でも、自分の居場所はないと再認識してしまったら? 次こそ僕は学校に行けなくなってしまう。
 ……そんなの嫌だ。怖くて足が震える。



「学校に行っていない間に、自分の本音に気が付くことが出来たでしょ? それでいいんだよ」



 光莉さんの言葉一つ一つが胸に刺さる。



「あとは自分の本音を聞くかどうか。本音を大切にできるかどうか、だよ。……それに。さっき言ったでしょう? 選択した時点で運命は決まっているって。智也くんは学校を休む選択をした。だからこの先に待っている君の未来は、必然的に決まっているんだ」

「僕は……」



 僕は。
 このまま学校に行かない、っていう選択はできない。休んだことで僕は一つの答えに気が付いた。
 僕は学校に行きたい。
 クラスメイトの話に混ざってみたい。
 学校で勉強をしたい。
 優衣と一緒に学校の図書館に行きたい。
 それでおすすめの小説を教えてもらいたい。
 それから。
 優衣に心配かけてごめん、って言いたい。
 優衣に、僕はもう大丈夫だよ、って胸を張って言いたい。
 優衣にありがとう、っていっぱい伝えたい。
 学校を休んでいた僕に、毎日のように本を貸してくれて。いつだって僕に居場所を作ってくれる優衣。
 僕の居場所はいつだって優衣だ。
 ……僕も優衣の居場所になりたい。