「優衣ちゃんのこと。好きなんでしょう?」

「好きっ、です」

「いい表情するね、君」



 光莉さんは柔らかく微笑んだ。
 なんだか、急に光莉さんがお姉さんっぽく見えて、僕は恥ずかしくなった。なんでも見透かしてくるかのような目。今日出会ったばかりの人だけど、僕はこの人にはかなわないや。



「でも、僕は。この気持ちを伝えられない」

「なんで?」

「学校に行ってないし……」



 学校から逃げている僕はかっこ悪い。だから、優衣に告白する勇気がない。
 学校に行けていないから、自分に自信がなくなっているんだ。



「……はあ。学校に行っていないからなんなの? 学校に行けないからって、人生終わったような顔をして。智也くん、学校行っていない間でも、ちゃんとなにか大きなものを得たんじゃないの?」

「得たもの……?」

「学校に行っていない、行けない、っていうのはさ、学校に行きたいって気持ちの裏返しなんじゃないの?」

「……」

「好きな子だからこそ臆病になってしまう。クラスメイトと仲良くなりたいからこそ、声をかけるタイミングを逃してしまう。学校に行きたいと強く願うからこそ、また行けなくなることが怖い。……違う?」



 光莉さんに言われて言葉も出なかった。
 光莉さんの言う通りだと思った。