八千代達が住まう山奥には昔ながらの学生寮のような長屋型の建物ががある。
その建物はこの里に住まう人達の部屋だった。
男子十八名、女子十二名の計三十名が共に暮らす里。
長屋、、、と言っても人数が多すぎる為、二階創りになっているが、、、。
外は暗かった。夜中であった。
「、、、眠れない!」
布団に包まり、眠気が中々こないことに怒る少女がいた。
その少女―――八千代は痺れを切らしたようにむくりと起き上がり、寝間着から外出着を着る。
外の天候を確認すると曇りもなく満月が綺麗に見えていた。
「、、、よし!」
そう意気込むと、八千代は一瞬の動きで山に突入していく。
その様子を一人の少年が屋根の上から見ていた。
「あーあ、八千代行っちゃった。オレも行こーかな〜、、、暇だし」
そう言ったのは悠陽。
じっと気配を消し、八千代を追いかけた。

悠陽は木々の間を素早く移動している。そして、気配は完全に無と化していた。
(八千代は、、、あっ、いた)
丘の所で寝転がっていた八千代を発見し、上から様子を伺う。
八千代は、、、寝ていた。静かに寝ていた。
沢山動いたので疲れていたのだろう。
「おーい、起きろ〜」
「む〜、、、悠陽の特別アケビ、、、美味しかった、、、むにゃむにゃ」
「、、、」
その瞬間、丘に「痛ったぁ!」という声が響き渡った。