「本日、上級生の夜間演習を行なう!」
夕涼みから数週間後、午前中の授業の時に悠先生が声を張って言った。
「逃げれる訳ないだろ!?」
「悠先生、手加減って言葉知らないから」
「少しは手加減しろ〜!」
というみんなのブーイングに悠先生は怖い顔をして言った。
「お前ら、、、演習が終わるまでに俺に捕まれば、翌日の課題を倍に増やす」
教室に寒い空気が流れる。夏だというのに寒い。
そしてようやく理解した誠一が「はぁぁぁ!?そんなの可笑しいだろ!!」と大声を上げたが、先生は罰を取り消してくれなかった。

辺りはすっかり暗くなった午後九時。
上級生達は広場に集まっていた。
「それでは、始め!」
みんな一斉に散らばった。

「、、、ここまで来れば、、、」
荒い呼吸を整え、木の上で待機。遠くの方で悲鳴が聞こえる。早速誰か捕まったらしい。
風が髪を木の葉を揺らす。心臓の音がどんどん激しくなる。暗闇の方から誰か走って来た。
一瞬、先生かと思ったがよく見ると二つ年上の七基(ななき)だった。ついでに言うと私の班の班長。
男性にしては少し長い土器(かわらけ)色の髪を金色の髪留めで留めて流しているので、すぐに分かった。紺色の着物に深緑色の羽織りを腰で巻いている。
七基は私の隣に来ると言った。「もうかなり捕まってるよ。始まって一時間も経ってないのに」
「悠先生から逃げるなんて出来ないよ、、、」
小声で話していると、数十メートル離れた場所にいた悠先生と目が合った。
「、、、逃げよう」
「うん!」
そう判断し、逃げようとした時、隣の木に悠先生がいた。
「おっと、、、」少し焦る七基。
「うわっ!」驚いて木から落ちそうになる私。
一目散に後ろへ逃げるが先生は無言で追いかけて来た。そして先端に重りの付いた縄を投げてくる。それは蛇のように曲がり、私を捕まえた。振り子のように木の枝に(くく)り付けられる。
七基は縄を火遁の術で燃やしたが、背後には先生。気付いた時には遅く、捕まってしまっていた。