その日、私と琥珀(こはく)は悠先生に呼ばれていた。
「来てもらって悪いな。準備で忙しかったろう」
悠先生は二十代くらいの見た目だが、実年齢を聞いたところ上手くはぐらかされてしまったので実年齢は知らない。
「いや、ある程度済ませた」隣で琥珀が凄いことを言う。
「そうか、あと一ヶ月だ。それまで鍛錬に励め」
「はーい」
琥珀は先生の部屋から出ていった。
六畳の畳が敷かれた部屋に、私と悠先生だけになる。
「それで、八千代は準備したのか?」
「お菓子と花札と双六(すごろく)と蜜柑と―――」
「待て待て!遠足に行くんじゃないんだぞ!」
「、、、自分で考えて入れなさいって言ったの先生じゃん!」
そう言い返せば言葉を喉に詰まらせている先生。
「、、、確かにそうだが、、、」
琥珀の後を追って部屋から出ようとした間際、悠先生が口を開いた。
「ちゃんと終わらせろよ」
「気を付けます、、、」
「泣きついてきても知らないからな」

先生の部屋を後にし、山の中をブラブラ歩いていると、何処からか(ねぎら)いの言葉が聞こえた。
声の主は木の上にいる。
悠陽(はるひ)!!」
彼もまた、私と琥珀と同じ年齢で一旦里を出るメンバー。
「先生に呼ばれてなかった?」
そう聞くと木の上から飛び降り、何事もなかったように着地。
「呼ばれたよ。でも行かなかった」
「何で?」
「面倒臭いし、話って言っても進行報告だけでしょ?」
「悠陽っぽいね、、、」
「それより、今日の夕飯は猪肉だ!」
「本当!?」
猪肉美味しいんだよね〜。
「まぁ、オレが狩ったっていうより、、、罠にかかったやつなんだけどね」
「そっか、今週の食料調達担当は私達だったね。、、、忘れてた」
班は悠先生のあみだくじで決まる。五人ひと組。
私と悠陽は同じ班なのだ。
「、、、」
呆れたように此方を見ないで!?