今日はオリオンと一緒に任務へ行く。
「元々人が住んでいない町だったんだと、今日は町中駆けずり回わなくて良さそうだな」
護送車の中でアサヒに渡された地図と情報を見ながら担当地区を決める。
町の様子は何時もと変わらなかった。
僕の武器である片鎌槍は近距離攻撃に特化しており、拳銃よりも殺傷能力が高い。まぁ、引き金を引く人にもよると思うけど、、、。オリオンの武器は自動拳銃だが、少なくとも僕より強い。
右手に持っている身長と同じ長さの鎌槍をクルクル回す。目の前には無数の敵。
「業務開始」

―――ずっと、憎くてたまらない奴がいる。
家に一枚だけあった写真には、幸福そうに微笑む二人の姿があった。
母と、母と妹を殺した殺人鬼。
『ハヤト、今まで悪かったなぁ』
過去の声が木霊する。
自分の(かたわ)らに抱いているのは変わり果てた妹の姿。
床に飛び散る朱餡(しゅあん)色。それは父の左胸から流れ出たものだった。胸に刺さっているのは銀色に光るナイフ。僕が握っている。
『じゃあ、彼奴リピットじゃなかったのか。マツリもあんな風に殺すんじゃなかったなぁ』
血を吐きながら、其奴は笑う。
『いや、良いか今更』
それは、父と呼ぶのに相応しい人だったか、今となってはもう分からない。
だって、僕が殺してしまったから―――。

「、、、ねぇ父さん。何で母さんとマツリを殺したの?」
『俺は彼奴らを愛していた。世界で一番、俺が彼奴らを愛していたんだ。彼奴らだってリピットに殺されるより俺に殺されて幸せだったはずだ』
そんな声が聞こえてきたような気がした。
何処までも自己中心的で、僕達のことを考えない。どうせリピットに殺されるなら無理心中を図る方が良いなんて、馬鹿だろ。
そんな偏った考えに、母さんとマツリは巻き込まれたんだ。
「、、、うん。分かるよ父さん」
片足に力を入れ、リピットの腕を踏み潰す。
―――バキン!!
鈍い音、骨が折れた時の音だ。
「でも、お前は絶対に許さない!!」
投げつけるように言葉を吐き出し、護送車に向かう。
「オリオンも終わったんだ」
「まぁな、今回も何事もなく終わったし、早く帰ろーぜ」
「りょうかーい。帰ったら何か食べよーっと」
「お、良いなそれ。食べるなら他の隊員に見付からないようにしないとな」
「大丈夫でしょ。もう寝てると思うし」
「だな」
暗い町に、僕達の笑い声が聞こえた。その笑い声は年相応な少年のものだった。