ルナが怪我をして約一ヶ月が過ぎた。
怪我も治り、今まで道り任務にも行けるようになったある日のこと。
その日、ルナは施設の庭で花を見ていた。
花の名前はブルースター。
花言葉は『幸福な愛』
それを一輪、二輪、三輪と摘み、紙紐で束ねる。
 毎年この時期になるとルナは花束をある人達へ送る。

 施設を出て二時間程歩くと、目的地が見えてきた。
辿り着いた先は扉や外壁はつたで覆われ、窓硝子は辺り一面に硝子が散らばっている木造建築の一軒家。
 ルナは持っていた小刀でつたを切り落とし、中に入る。
昼だというのに中は薄暗く、床は歩くごとにミシミシと音を立てた。そのせいか薄暗い部屋が不気味に感じる。
それ以外にも粉々になった食器が散らばり、椅子は倒れ、本は埃を被っていた。
そして何より室内に充満したカビの匂いにルナはうっと声を漏らす。
 この家にはかつて三人の家族が住んでいた。
父と母、そして幼い。ルナであった。
外に出て、丸い石が置いてある所に行く。石の前には枯れた花と一輪挿し。
枯れた花を捨て、近くの川で()んだ水と摘んできた花を刺す。
 そうして一連の流れが済んだ後、今はもういない父と母に向けて手を合わせ、一年分の幸福を送った。