カチカチカチと、時計の秒針が正確に時を刻む談話室でルナは報告書を制作、、、、否、睨みつけていた。
どれだけ睨んでも報告書は怯まない。それは遠征任務の報告書だった。睨み続けてかれこれ一時間半は過ぎている。
 談話室にはルナ以外誰もいなかった。ただ一人、書きかけの報告書と戦っていた。
勝敗などは始めから目に見えていた。案の定、書類制作という強敵に良いように殴られてルナは白旗を何度も挙げている。
 外は雨だった。久々に雷雨だった。
雨が窓を五月蝿(うるさ)く叩く。
「まだ起きてたんだ」
今日の夜間見回りのアサヒが懐中電灯を片手に言った。
「報告書が終わんない、、、、」声にならない声で訴える。
「今何時だと思ってるんだ?報告書は明日の昼までで良いから寝ろ」
ルナは視線を上げ、壁の時計を見た。古い飴色の振り子時計。
時計の針は午前零時十分を指していた。
「あー、、、、」
 ペンを木で作られた筆記箱に入れ、書きかけの報告書をバインダーに閉じる。
「早く自室に行って寝ろよー。俺は給湯室で寝てるリンドウを叩き起してから寝るから」
「また寝てるんだ、、、、」
 リンドウはよく給湯室に毛布を敷いて寝ている。自室で寝れば良いのにと思うが、リンドウにとっては快適らしい。
翌日、ルナが寝坊したのは言うまでもない。