出身である多宝村に、王が訪れる事を誰かが噂に聞き、粗相のないように一時帰宅していたのだ。

そんな将拓には、妹と弟が一人ずついた。

「お帰りなさい、兄様。久しぶりの村の景色は、如何でした?」

「ああ。いつ見ても、素晴らしい物だよ。ここは長閑で、絶景だらけだ。王がお忍びで訪れるのも、よく分かる。」

すぐ下の妹の黄杏は、将拓にお茶を出した。

「なあ、黄杏。尊重の家の壁に貼られている、知らせを見たかい?」

「ええ。王がいらっしゃったら、村中の娘でもてなせって言うやつでしょう?」

黄杏もこの村の娘の一人ではるはずなのに、どこか知らん顔だ。

「黄杏は、興味がないのか?村の女達皆、我こそはと息んでいるぞ。」

「兄様は、ちゃんと条件を読んではいないの?兄のいない娘と、書いてあるでしょう?」

将拓は、不適な笑みを浮かべた。

「そうであったな。残念。黄杏は、背も高いし格好も良いのだがな。」