「ああ……」

将拓は、口に酒を含むと、一気に裂けた傷へと吹きかけた。

「うっっ!」

「信志様!」

飛び上がる程の痛みを、必死に堪える信志を見て、黄杏は、思わず信志を抱き寄せた。

「黄杏。そのまま抱いていろよ。もう一度だ。」

するとまた酒を口に含み、傷に吹き掛ける。

信志の手が、強い力で黄杏の腕に、しがみつく。

痛すぎて、赤く跡が付くくらいだ。


「よし。黄杏、その黒い布をこちらへ。」

「何が入っているのですか?」

将拓は、黒い布を広げると、一番細い針に一番細い糸を通した。

「傷口を縫うんだ。いいですね、信志様。」

息を切らしている信志は、頷くのが精一杯だ。

「黄杏、信志様の口の中に、厚い布をくわえて貰え。」

「えっ!」

「麻酔無しで縫うんだ。間違えて、自分の舌を噛んでしまわぬようにな。」

黄杏は信志の首元を、自分の腕で覆った。

「早くしてくれ。」