「分かっている!」

そう叫んだ信志は、立ち上がった。

「また……明日、来る。」

「お送り致します。」

「いや、いい。一人で帰る。」

そう言って信志は、草むらの中に消えていった。


『どうするつもりなのか。』

黄杏にも、将拓にも、言われた言葉。

妃にもできない。

召し使いにする事も嫌だ。

「どうすれば、いいのだ!」

信志が、髪を掻きむしった時だ。


黒い布で全身を覆った者が数人、信志を取り囲んだ。

「失礼ながら、信寧王とお見受けします。」

信志は、腰にある刀に手をかけた。

「いかにも。そなた達は、何者だ。」

「あなたに、滅ばされた国の者。」

相手も、刀を抜く。

それを合図に、信志と黒い布を纏った者達の、戦いが始まった。


信志も剣術を習い、それ相応なりの技を持っていたが、相手も同じくらい強い。

その上、相手は数人に対して、信志は一人だ。

「お命、頂戴致します。」