「だからこそ、私は側にいる事は、できないのよ。」

「黄杏……」

「聞いたわ。兄のいない娘を妃にするのは、過去に妃の兄が内乱を起こしたからだって。それは、100年も守られたこの国の歴史なのよ?それを私が、信寧王に破れと言うの?」

その一言で将拓は、黄杏が如何に、信寧王を愛しているのかが、分かった。


信寧王も黄杏を愛し、黄杏も信寧王を愛している。

将拓はこの二人を、まずは会わせねばと思った。


次の日の夜。

将拓は信寧王を、黄杏の元へ、招き入れた。

「信寧王……」

「今までのように、信志と呼んでくれ、黄杏。」

だが黄杏は、また部屋に閉じ籠ってしまった。

「黄杏。話は、将拓から聞いた。」

戸越しに、信志は黄杏に、優しく話しかけた。

「そなたは、本当に私の事を、愛してくれているのだな。」

だが黄杏からは、返事はない。

「私もだ、黄杏。心から君を愛しているんだ。」