恋しい人が王だと知った黄杏は、次の日から仕事に行かず、家に閉じ籠ってしまった。

そんな黄杏を、一番心配したのは、兄である将拓だった。

「飯、食べているか?」

時間を作っては、黄杏を見舞った。

「そんなに痩せては、信寧王もがっかりするぞ。」

「……もう、会わないから。」

陽の当たらない部屋に、一日中籠り、数日で黄杏の顔は、青白くなってしまった。


「……離れないと、約束したのだろう。」

「それは……信寧王だと、知らなかったから……」

「では、黄杏が信寧王を愛したのは、“役人”だったからか?」

黄杏は、将拓の方を振り向いた。

「信寧王の本当の名、信志様と仰るのだな。王は、ただの遊び女に、本当の名など教えるだろうか。」

黄杏の目に、涙が浮かぶ。

「私の口から、こんな事を言う事ではないと思うが、信寧王は本当に、そなたの事を愛してくれているのだと、思うよ。」

黄杏は、声をあげて泣き崩れた。