「……離れぬと、約束をしたではないか。」

黄杏は、ガクガクと身体を震わせていた。

「信寧王。今日のところは、許して貰えないでしょうか。」

見かねた将拓が、黄杏の代わりに、信志に謝った。

「妹は、恋人が王だと知り、動揺しています。落ち着くまで、会う事はお控え……」

「ダメだ!」

あの穏やかな信志が、初めて大きな声を出した。

「黄杏……このまま終わりだなんて、私は嫌だ。」

「信志…いえ、信寧王……」

名前を呼ぶだけで、罪深くなっていくような気がした。


「信寧王。私の事は、どうかお忘れ下さい。」

「黄杏!」

「私には、もう構わないで下さい!」

そう言うと、黄杏は走り去ってしまった。

「黄杏!黄杏!」

追いかけようとする信志を、将拓が引き留めた。


「ご無礼を致します。ですが、妹に考える時間を、お与え下さい。」

信志は、その場に膝をついた。

「申し訳、ありません……」

将拓は、妹の黄杏の分まで、信寧王に頭を下げた。