将拓は、自分の手を掴んだ相手を見て、その目を疑った。

「あなたは……王ではありませんか!」

「静かに。騒がないでくれ。」

「えっ?」

だが、その会話を聞いて、混乱したのは黄杏の方だった。


「嘘……」

「黄杏?」

後退りをしながら、黄杏は恐れで体が震えた。

「信志、あなたは信寧王だったの?」

更に将拓の方も、驚いた。

「黄杏、おまえ……信寧王だと知らずに、会っていたのか?」

「ああ!私は、何て恐ろしい事を……」

黄杏は、走り去ろうとした。

「黄杏!」

信志は、黄杏を引き止めた。


「黙っていた事、すまなかった。騙すつもりはなかったんだ。」

「では、どういうおつもりだったのですか!」

泣きじゃくりながら、黄杏は信志の腕を、振り払った。

「私は妃にはなれぬと言うのに!」

「信じてくれ!何とかするから!」

「できる訳が、ないではありませんか!」

黄杏は、将拓の後ろに隠れた。