恋の病に冒される黄杏に、いち早く気づいたのは、兄の将拓だった。

「黄杏。最近、ため息が多いな。」

「兄様。」

宴のない昼間は、二人とも家に帰っていた。

「……王は、いつまで滞在するおつもりか、お分かりになりますか?兄様。」

「さあ……」

その質問を聞いて、もしやため息の相手は、あの客人にいるのかと、将拓は思った。


「相手は客人の中か。いづれ、都に帰るお方達だぞ。」

黄杏は胸が痛くなったが、引き下がる訳にもいかない。

「離れぬと約束をしました。」

「そうか。」

あっさりと答える兄に、黄杏は顔をしかめた。

「そこまで約束をしているのであれば、何も言う事はない。」

「兄様……」

「結婚が決まったら、真っ先に教えてくれよ。」

黄杏は、切ない恋の間に、一筋の光が射した気がした。

「はい……」

仲のいい兄妹はこうして、また絆を強めていったのだった。