その柔らかな舌の動きに、思わず声が漏れた。

「甘い声だ。もっと聞きたいよ。」

すると信志の荒い息使いが、今度は耳元で聞こえる。

「待って……」

「えっ?」

信志は、そっと黄杏の顔を見た。


「こんな事聞くのは、無粋だって分かっているんだけど……」

「黄杏?」

「私は……あなたの妻に、なれるの?」

胸を射ぬかれたような信志は、身体を起き上がらせた。

「ごめんなさい、違うの。」

黄杏も身体を起こして、信志にしがみついた。

「周りの人に恋しい人がいるって言ったら、体だけは許すなって……」

「えっ?」

「その人が都に帰る時に、連れて行ってもらえなかったら、ただ身体を弄ばれるだけだって!私、私!そんな事、嫌なの!あなたと離れたくない!」

黄杏が叫ぶと、信志は再び、黄杏をきつく抱き締めた。


「信じてほしい。」

「信志……」

「私は何があっても、君を離さない。」