「あなたが、都に帰ってしまうのは、悲しくて堪りません……」

信志は、また流れ落ちる黄杏の涙を、指で拭った。

「私も、同じ気持ちだ。都に帰りたくない……そなたと毎晩、こうして会っていたい……」

「信志……」

「黄杏……」

二人は、お互いの名を呼び合うと、また熱く唇を重ねた。

何度も何度も、唇を重ねる度に、信志は黄杏を、きつく抱き締める。

「もう、我慢できないよ、黄杏。」

黄杏を抱き締めながら、庭先に通じる廊下の戸を、右手で開ける信志。

「信志?」

「気持ちを確かめ合ったんだ。君を抱いてもいいだろう?」

すると黄杏は、廊下を通り越して、側にある部屋の中に押し倒された。


月夜に照らされた信志の、熱に帯びた顔が、浮かび上がる。

その男らしさに、黄杏の心臓も早くなる。

「黄杏。私のものになってくれ。一生、大切にするから。」

掬われた手の甲に、信志の舌が当たる。