その次の日の夜。

宴が終わるのも、明日で終わりだ。

もしかしたら、信志に会えるのは、今夜が最後かもしれない。

そんな事を思ったら、黄杏は泣けてきた。


「どうして、泣いているの?」

月明かりの下に現れたのは、信志だった。

「ううん。何でもない。」

涙を拭った黄杏を、信志は抱き締めた。

「信志?」

「黄杏。何でも話してほしい。君の事、もっと知りたいんだ。」

黄杏は信志の手を、そっと握った。

「私もです。私も信志の事、もっと知りたい。」

「黄杏……」

信志の腕の中で、見つめ合う二人。

月明かりが雲に隠れたのを見計らって、二人は唇を重ねた。

「このまま、時が止まってしまえばいいのに……」

「悲しそうに言うね。」

「だって、時が流れてしまえば、宴もやがて終わってしまって、信志は都に帰ってしまうもの。」

俯いた黄杏の顎を指で上げ、信志は黄杏と見つめ合う。