「恐れ入ります。」

益々、頭を下げる忠仁。

「少しだけ、元気が良すぎるが、な。」

「あっ……」

忠仁が武勇に優れているせいか、娘の紅梅も幼い頃から、武術に長けていた。

今でもたまに、王の武術の相手をする程だ。

「こればかりは、お恥ずかしい。」

「はははっ!」

信寧王は笑いながら、忠仁と共に、王の間へと入って行った。


王の間には、別な家来が控えていた。

横には、信寧王が署名しなければならない書類が、山程ある。

「今日は一段と、仕事があるな。紅梅の元へ行くのは、いつ時になるのだろう。」

「今夜も、紅梅の元へ行かれるのですか?」

忠仁が問う。

「ああ。今朝、紅梅と約束をした。」

信寧王が、書類の一枚を、手に取った時だ。

忠仁が、王の側に来た。

「本日は、紅梅の元へ行くのは、お止めになってください。」

「どうしてだ。」

「仲が良すぎると、子はできにくいと言われています。」