「明日も来るよ。」

信志は、黄杏にそう告げた。

「明日も、月明かりが綺麗だといいね。」

「えっ……」

そう言って信志は、大広間へ続く廊下へ。


「王、どちらに。」

心配した忠仁が、駆け寄って来た。

「心配するな。子供でもあるまいし。」

「しかし、王に何かあっては、私は国民に顔を合わせる事ができません。」

「はははっ!」

「笑い事ではありません!」

信志が振り返ると、忠仁は真顔でこっちを見ている。


「分かった。危ない事はしない。」

「当たり前です。この前のように、池に落ちるような事は、なさらないように。」

信志は、子供みたいに心配されている自分に、呆れてきた。


ふと台所の方を見ると、遠くに黄杏の姿が見えた。

「あの者達にも会って、お礼を言いたいものだ。」

「それならば、私から伝えておきます。妃になれない者には、近づかぬように願います。」

信志は、ぎゅっと拳を握りしめた。