「私の兄様もね、役人をしているから、同じような服装をしているの。でもあなた、黒ではないのね。身分が高い人?」

「あ、ああ……」

「そうなの?王様に仕えるのは、大変でしょう?でも確か兄様が、王はさすがだ!って言ってたから、そうでもないのかしら。」

そう言って、女はふふふっと笑って、背中を見せた。

その隙に、自分の上着を、女に羽織らせた。

「えっ?」

「濡れているから迷ったのだが、これ以上そなたの素肌を拝むのは、どうも卑怯な気がしてね。」

そう言うと女は、胸元を両手で隠した。

「名前は?」

「黄杏と申します。」

「そなたは、宴に参加しないの?」

「条件に合わなくて。」

「何の条件?」

王は、娘達に条件が出されているとは、全く知らなかったのだ。

「兄のいない娘。私には兄がいるから、お妃候補には、なれないんです。」

王は絶句した。

自分はあの時、村の娘達全員と、顔を合わせたいと言ったはずなのに。