「驚きました。真っ直ぐに池の中に、入ってしまわれるんだもの。」

女は、自分が着ている上着を脱いで、濡れた顔や髪を拭いてくれた。

「早く着ている物を、乾かした方がいいですよ。さあさあ、脱いで。」

女は、自分を王だと言う事に、気づいていないのか、気を使うでもなく、次から次へと着ている物を剥いでいく。

「これで全部ですか?」

「ああ、えっと……」

辺りを見ると、帽子がない。

「うわっ!池の中に浮いている。」

慌ててまた池の中に、足を一歩入れた時だ。

自分の前を、女が水を掻き分け、進んで行く。

「はい。」

そして手に取った帽子を、自分の前に差し出すではないか。


「有り難う。」

「どういたしまして。」

普段はお礼を言うと、恐れ多いと言われるのに。

「あなた、王の家臣のお一人でしょう?」

女の着物が濡れているせいか、素肌が透けて見えそうだった。