しばらくして信寧王は、酔いを冷ましに、立ち上がった。

「王、どちらへ。」

「酔いを冷ましてくる。」

「私も付き添います。」

忠仁も、一緒に立ち上がった。

「いや、一人で大丈夫だ。」

信寧王はそう答え、一人庭先へと足を踏み入れた。


そこには、立派な木が沢山、植えられていた。

上を見上げると、木々の間から、月が綺麗に見える。

「綺麗な月だな。」

空に見とれて、王は足を踏み間違ってしまった。

「危ない!」

女の声と一緒に、どこにあったか分からない池に、そのまま身を投げてしまった。

「わっ!」

もがく信寧王の手を、誰かが掴んだ。

「落ち着いて下さい。その池、あまり深くないので、足を伸ばせば立てます。」

女の言う通り、王は足を伸ばした。

すると、さっきまであんなにもがいていたと言うのに、今は嘘みたいに池の中に立っている。

「こちらです。」

手を掴んだ女は、池の外まで、王の手を引いた。