美麗の方にも、気持ちがある事を、黄杏は気づいた。

「美麗、あなた……このまま王の妃になって、本当にいいの?」

美麗は、徳利をぎゅっと握った。

「じゃあ黄杏は、両親の期待を裏切れと言うの?」

「えっ?」

美麗は、どことなく追い詰められた目をしていた。


「もう遅いのよ、何もかも。そのせいで、今までの縁談は、全て断ってしまった。その度に、両親のがっかりした顔を、見てきたわ。これで最後なの。親孝行できるのは。」

「そんな……」

黄杏が手を伸ばした瞬間、その手はスルッと、空を舞った。

「美麗。兄様は、今も美麗を想っているわよ?」

だがその声も届いているのか、届いていないのか、美麗は知らない振りをして、大広間へと行ってしまった。


なぜこんなにも、二人はすれ違ってしまったのか。

幼い頃の二人を思い出しながら、黄杏は庭へと出た。


そこには、綺麗な月がぽっかりと、浮かび上がっていた。