「分かったわ。急いで持ってくるわね。」

美麗から徳利を渡されると、黄杏は台所へと行ってしまった。

残されたのは、美麗と将拓の二人だけだ。

「元気そうだね、美麗。」

「将拓も。元気そうで、何よりだわ。」

恙無く挨拶を交わす将拓に、美麗も心が解けて行く気がした。

「聞いたよ。王のお妃候補なんだって?」

「ああ。両親が、そう望んでいるの。」

将拓は、首を傾げた。

「君は?君は、望んでいないの?」

見つめ合う美麗と将拓。


「私は……」

そこへお酒を注いだ徳利を持った、黄杏が戻ってきた。

「どうしたの?二人とも。」

いつもと違う雰囲気に、黄杏が心配をする。

「兄様。美麗は、王の妃候補よ?」

10年経っても、将拓の心の中に、美麗が住んでいる事を、知ってしまう黄杏。

「ああ。分かっているよ。」

そう言って将拓は、また大広間に、戻って行ってしまった。

「美麗……」