将拓がいなくなって、10年。

美麗は、村一番の美人に育った。

将拓が、時々実家に帰って来ているのは知っていたが、申し出を断った手前、美麗から声を掛ける事はなかった。

そして美麗の両親は、村一番の美人に育った美麗を、金持ちの誰かと、結婚させようと考えていた。

そんな中で飛んで来たのが、王のお忍び旅行。

願ってもいない好機だった。


「お酒がありませんね。新しいのを、持って来ます。」

「頼むよ、美麗。」

顔を合わせる信寧王と美麗。

それは、美麗の計算の内だった。

初めのうちから、王の心を掴み取っておきたかった。

何よりも、王の妃になる事が、今まで育ててくれた両親への、何にも勝る親孝行だと思っていたのだ。


空になった徳利を持って、廊下に出た美麗。

そこには、黄杏と将拓が話をしていた。

「あっ、美麗。」

先に気づいたのは、黄杏の方だった。

「黄杏。お酒が無くなってしまったの。」