信寧王の周りを、たくさんの女達が取り囲み、とりわけ美麗は、すぐ隣で王に、酒を注いでいる。

自分には、全くの無関係だと分かっていても、一生に一度しかないお祭りに、参加してみたい気持ちも、なくはない。

王の家来達にも、一人一人、女達が付いているのだから、それぐらいさせてくれたって、いいではないかとも思った。


そんな事を考えながら、台所に戻ろうとすると、廊下に兄の将拓の姿が見えた。

「兄様。」

「ああ、黄杏か。」

地方都市の役人をしている兄の将拓は、王の宴に出るのに、正装をしていた。

「兄様、信寧王とお会いになったの?」

「先程、ご挨拶させて貰ったよ。さすがこの国の頂点に立つお方だ。私のような位のない役人に対しても、礼を尽くして下さる。」

将拓は、尊敬の眼差しで信寧王を見ていた。

「お妃候補、美麗なんですってね。」

「ああ……そうだな。美麗は美しい。お相手には、相応しいよ。」