そして2週間かけて、多宝村に到着した信寧王。

最初の2日間は、村の絶景を堪能した。

その間も、付いてまわるのは、美麗をはじめとした条件に合う女達だ。

「王、お水でございます。」

「有り難う。」

飲み終わった杯を、信寧王は美麗に渡した。

「そなた、名前は?」

「美麗と申します。」

「そうか。覚えておこう。」

その一言で、周りの女達は、ため息を漏らす者、感嘆の声をあげる者、それぞれだった。


「あーあ。もしかしたら、美麗に決まるかもしれないわね。」

「名前を聞かれたくらいで?」

「あら、私の時は目も合わせてくれなかったわよ。」

宴は明日の夜から始まると言うのに、既に美麗に決まったような、雰囲気だ。


それを見たお供の忠仁は、条件を出しておいてよかったと思った。

この村に行こうと行った時に、あまり乗り気ではなかったのに、こんなにも早く、妃が決まりかけるとは、考えもしなかったからだ。