「美麗、美麗!」

中から美麗の母親が、出てきた。

「美麗、接待の日に着ける髪飾りが、できたわよ。」

そう言って、化粧をしたばかりの美麗の髪に、豪華な髪飾りをした。

「高かったんじゃない?」

「高くてもいいさ。自慢の娘が、王の妃になるかもしれないんだよ?もしかしたら、孫がこの国の王様になるかもしれないんだ。これくらい、何だと言うんだい。」

美麗の母は、一生に一度の好機とばかりに、この接待に力を注いでいた。

美麗の母ばかりではない。

この村の、条件に合う娘を持つ、親全てだ。


「あら、黄杏。これから接待の打ち合わせかい?」

「はい。」

「黄杏は残念だね。何と言っても、優秀な兄様がいるから。美麗が王に選ばれても、恨まないでおくれよ。」

美麗の母は、王が来る前から、選ばれるのは自分の娘だと、確信している。

「そうだ、黄杏。美麗をよく助けてやっておくれ、ね。」

「はあ……」

黄杏は、早く接待が終わって欲しいと、願うばかりであった。