「もー、人生ってなんなの。もういや、やめたい。いつまで続くの?」
 そんなことを呟きながらゆっくりと歩いた。空を見上げると、ピンクと紫とオレンジ色の綺麗なグラデーションを飾る夕焼け空だった。立ち止まり、吸い込まれそうな想いに駆られてそうになるがなんとか我慢し再び歩き出す。
「ふうー、着いたー。疲れたー」
 思わずため息を吐いた。
 今日の気分はここしかない。私は家とは間反対の寄り道コースである近所の土手の階段に腰をかけた。
 暗くなるまでのほんの数分。何をするわけでもないが、ここに来るとなぜか落ち着いた。自分に問いかけたり、空を見てるとあっという間に時間が過ぎていく。そんな一時がとてつもなく好きだった。
「ねえ、最近ここによく座ってるよね?なんで?」
 突然後ろから声をかけられ、思い切り振り返ると声の主の顔が至近距離にあった。
「わあ!!びっくりした!!!」
 立ち上がりその人を見た。するとその人は目を細めて柔らかに笑った。
「ごめん、びっくりしたよね。驚かせるつもりはなかったんだけど...」
「あ、すみません!こんなに近くに顔があると思ってなくて」
 その人は色白で背が高くて、綺麗な顔立ちをしていた。くっきりとした二重にすらっとした鼻筋。芸能人かと思うくらいな雰囲気だった。
「座ってもいいかな?」
「あ!はいもちろん!どうぞ!」
 慌ててしまい声が少し裏返ってしまい恥ずかしい。でもなんで声をかけたのだろう。ここにいちゃダメだったかな...。
「ねえ、君も座ってよ!ちょっと話さない?」
 ぼーっとしていて立っていたことに気がつかなかった。恥ずかしい。
「失礼します...」
「どうぞ」
 優しさ溢れる声でそう言った。