私は、ただあなたの瞳に映っていたかった。
 人生には、忘れたくない瞬間があることを生まれて初めて知った。
 私は、あなたのおかげで世界についてもっと知りたくなった。
 生きていたいって思ったの。
 昼の青空を自由に飛ぶ鳥のように、夜のような静けさにそよぐ風のように、たくさんの言葉をそっと渡してくれた。
 まっすぐな瞳。ふっくらとピンク色の唇。鼻が高く綺麗な横顔。優しさ溢れる声。
 数えきれないほど見ていたくなる瞬間があったの。
 あのね、そのいくつもの瞬間の中でもたった一時、涙を必死にこらえて、取り繕った笑顔とともに言葉を紡いでいるあなたをみてなぜか胸が苦しくなった。
 私はあなたについて全く知らなかったよね。ごめんね。本当にごめんなさい。
 私はね、あなたと目が合うと心がキューっとなるの。あたたかい気持ちになるんだよ。
 

「・・・!」
 ただその言葉をあなたの瞳に映って言いたかった。
 ただそれだけを。