ここベトナムで六ヶ月生き延びた僕たちは、待ちに待った休暇をタイで過ごしていた。
銃声や砲撃音の届かない場所なら、この際どこだって構わなかった。海の見えるバーで毎日のようにアルコールを飲み、生きている実感を満喫する。
夕暮れ時、薄紅に染まる海を眺めていると、グレッグがビールを煽りながらつぶやいた。
「ベン、あんなこと言って悪かったな……」
口数は少なかったが、なんのことを言っているのかはすぐにわかった。
「いいんだ、グレッグ。本当のことさ。それに、お前が一緒に来てくれなかったら、僕はこの休暇までもたなかった」
バーの脇にはプールがあったが、泳ぐ気にはならなかった。ここは静寂でも、銃声や仲間の叫び声は常に耳鳴りのように、頭の中で聞こえ続けている。
その夜はただ二人で夜空を見あげて、酒がぬるくなるに任せた。居心地は悪くはなかったが、良くもなかった。
実際に、僕は何度もグレッグに危ないところを助けてもらっている。だから感謝こそすれ、彼を責めることなんてできない。
それでも、グレッグから咄嗟に出たあの言葉や、家畜小屋での出来事が僕の心に重い足枷を履かせていた。そして、あの日の冷たい視線が忘れられないでいる。
この戦争によって彼が僕と同じように追い詰められていたのだとしても――。
星空の下で瞼を閉じても、視界は閉ざされはしなかった。
銃声や砲撃音の届かない場所なら、この際どこだって構わなかった。海の見えるバーで毎日のようにアルコールを飲み、生きている実感を満喫する。
夕暮れ時、薄紅に染まる海を眺めていると、グレッグがビールを煽りながらつぶやいた。
「ベン、あんなこと言って悪かったな……」
口数は少なかったが、なんのことを言っているのかはすぐにわかった。
「いいんだ、グレッグ。本当のことさ。それに、お前が一緒に来てくれなかったら、僕はこの休暇までもたなかった」
バーの脇にはプールがあったが、泳ぐ気にはならなかった。ここは静寂でも、銃声や仲間の叫び声は常に耳鳴りのように、頭の中で聞こえ続けている。
その夜はただ二人で夜空を見あげて、酒がぬるくなるに任せた。居心地は悪くはなかったが、良くもなかった。
実際に、僕は何度もグレッグに危ないところを助けてもらっている。だから感謝こそすれ、彼を責めることなんてできない。
それでも、グレッグから咄嗟に出たあの言葉や、家畜小屋での出来事が僕の心に重い足枷を履かせていた。そして、あの日の冷たい視線が忘れられないでいる。
この戦争によって彼が僕と同じように追い詰められていたのだとしても――。
星空の下で瞼を閉じても、視界は閉ざされはしなかった。