9区、復路のエース区間、裏エース。

 この9区に実力のあるランナーを配置できるかどうか。勝負を決定づけるような走りができる選手が配置される。戸塚中継所を出てすぐの下り坂や、権太坂での飛ばし過ぎると後半、ペースダウンしてしまう。

 スタートから3キロの下り、青坂がペースを掴む。青坂の切り札、風岡(かぜおか)。教立との差は1分以上となる。


 関東学園も後がない、関東の裏エースは夜風潤(よかぜじゅん)、3年。上級生で光、谺を実力で黙らせられるのは彼だけだ。関東学園もまた隠し玉を持っていた。夜風の父は実業団で長距離のコーチをしている、幼き頃からそのコーチングを受けたサラブレットと言える。綺麗なフォーム、鍛え上げられた筋肉。しかし彼は趣向が変わっていた。

 彼は常日頃から『殺し屋に追われたのなら、今より速く走れる』『魔宮の冒険で大岩が転がってきたら死ぬ気で走るはず』と言っていて、本番もそのイメージで走ると宣言していた。



 数分の差をひっくり返す逆転劇も起こりうるこの区間。関東学園の逆襲が始まる。


 前を行く9・10・11位の集団。その差は3分08秒。

関東学園(お前ら)全員、見てろよ)

 夜風が吠える。それは凡そ1キロ先に居る任典堂大らに届くほどの気迫。