15.6キロの東芦の湯バス停付近。長い坂を上ってきて前方が開ける。ここからいったん下り、再び上ったところが最高点だ。ここで見え隠れしていた2位、そして1位の背中を目視する。
自分の走る影を確認する。『力んできたな』と肩を上げ下げして和らげる。
スタミナは十分……よしっ……グングンと2位の馬引沢の背中が近づいて来る。捉えたっ! そう思った直後だった。油断していたわけでもない、しかし前にばかり気を取られ過ぎていた。
教立、高山渓介……。呼吸を乱すことなく音も気配も感じさせずに近づいてきた彼は、馬引沢もろとも空木をも呑み込む。
抜き去った彼の足音が変わった……。
何だ? 違和感を覚える……。以前見た彼と何が違う? 抜く前と抜いた後で走りが変わった? レース中にそんなことが可能なのだろうか?
そう、彼はフォームを変えていた。つま先着地の『フォアフット』で抜き去り、踵で着地する『ヒールストライク』に切り替えたのだ。
フォアフット、この走りはふくらはぎや太ももなどに負担が集中するため、強い下肢筋力を必要とする。本来は、短距離走での足の着地方法だが、近年のアフリカ勢等がこの走法で記録を伸ばしている。しかし日本人には骨盤の位置などから向かないと言われてきた。
変わって日本人の骨格は踵から着地をして、自然なストロークの中で足を後ろに動かして、最後は踵から地面を離れていくという日本人向けな着地方法のヒールストライク。
この二つの走り方で筋肉に掛かる負担を分担させる狙いが渓介の山登り術なのかもしれない。
まるで『ウォークブレイク』……。歩くことで回復するウォークブレイクと違い、異なる筋肉を使うことで走りながら疲労回復をさせる……。
そんなことが可能なのだろうか? もしそれが可能なら彼は無敵だ。
自分の走る影を確認する。『力んできたな』と肩を上げ下げして和らげる。
スタミナは十分……よしっ……グングンと2位の馬引沢の背中が近づいて来る。捉えたっ! そう思った直後だった。油断していたわけでもない、しかし前にばかり気を取られ過ぎていた。
教立、高山渓介……。呼吸を乱すことなく音も気配も感じさせずに近づいてきた彼は、馬引沢もろとも空木をも呑み込む。
抜き去った彼の足音が変わった……。
何だ? 違和感を覚える……。以前見た彼と何が違う? 抜く前と抜いた後で走りが変わった? レース中にそんなことが可能なのだろうか?
そう、彼はフォームを変えていた。つま先着地の『フォアフット』で抜き去り、踵で着地する『ヒールストライク』に切り替えたのだ。
フォアフット、この走りはふくらはぎや太ももなどに負担が集中するため、強い下肢筋力を必要とする。本来は、短距離走での足の着地方法だが、近年のアフリカ勢等がこの走法で記録を伸ばしている。しかし日本人には骨盤の位置などから向かないと言われてきた。
変わって日本人の骨格は踵から着地をして、自然なストロークの中で足を後ろに動かして、最後は踵から地面を離れていくという日本人向けな着地方法のヒールストライク。
この二つの走り方で筋肉に掛かる負担を分担させる狙いが渓介の山登り術なのかもしれない。
まるで『ウォークブレイク』……。歩くことで回復するウォークブレイクと違い、異なる筋肉を使うことで走りながら疲労回復をさせる……。
そんなことが可能なのだろうか? もしそれが可能なら彼は無敵だ。