5区、箱根駅伝名物、山上り20.8キロ。区間記録は1時間10分04秒。小田原中継所から芦ノ湖までの標高差は800メートル以上。
日本陸上競技連盟公認の長距離競走路では、スタート地点とゴール地点の2点間の標高差は1000分の1以内、つまり1キロあたり1メートルを超えてはならないと決められている。
箱根駅伝の過酷さが伺える。
箱根の玄関口である箱根湯本駅から国道1号線最高点874メートルまで標高差800メートル以上ある上り坂を一気に駆け上がる。16キロ付近から下り坂。
ラスト4キロは急な下りなので、切り替えも重要。5区での驚異的な走りをした選手は『山の神』と称えられる。
この大会の5区、山上りと6区の山下りは標高差800メートル以上を一気に走り抜けるため、平地でのスピード以外に特別な『適性』が求められる。
山の上と下では気温差も激しいため、汗をかくと低体温症や脱水症状に陥りやすく、これまで何人もの途中棄権者を出している難コースだ。
「光ちゃん、ありがとう、行ってくるよ」
空木が襷を受け取る。
「芦ノ湖駐車場で待ってるからなっ!」(礼を言うのはこっちだよ)
そう言って空木を見送る。谺、光共に流れが悪い時にそれを振り出しに、いや好転させてくれるゲームチェンジャーの役目として、見事の一言。
空木の足は軽い。しかし気になるプレッシャーを後ろから感じている。それは……空木が出場した全国高校駅伝、3区の区間新記録を持つ教立大高山渓介。
この箱根駅伝5区は特別だ。山の区間で勝負が決まると言っても過言ではない総合優勝。以前は往路で大量の貯金を作り、そのまま逃げ切ることが、優勝へのオーソドックスな戦法だった。
往路優勝、5区はそのくらい価値があり、みんなが注目する区間。ここで結果を出せば人生を変えられる区間と言ってもいい。そのため、5区の距離が短くなった。
そして5区には特別な能力が必要とされる。特別な『適性』。
単純に坂ダッシュが速いだけでは、箱根の山では通用しない。1キロの上りで『よーいドン』で速いのとも違う。
一番大事なのは、きつくなった時にもう1歩、2歩粘れるかどうか、そのメンタルの強さ。足や心肺機能を高めていくのはもちろんだけれども、気持ちの強い選手が5区を走るのに適している。
もったいぶっておいて、その『適正』が他の区でも当たり前そうな『能力』。それでもこの当たり前がこの場面でできるかは圧倒的別次元の課題となる。
日本陸上競技連盟公認の長距離競走路では、スタート地点とゴール地点の2点間の標高差は1000分の1以内、つまり1キロあたり1メートルを超えてはならないと決められている。
箱根駅伝の過酷さが伺える。
箱根の玄関口である箱根湯本駅から国道1号線最高点874メートルまで標高差800メートル以上ある上り坂を一気に駆け上がる。16キロ付近から下り坂。
ラスト4キロは急な下りなので、切り替えも重要。5区での驚異的な走りをした選手は『山の神』と称えられる。
この大会の5区、山上りと6区の山下りは標高差800メートル以上を一気に走り抜けるため、平地でのスピード以外に特別な『適性』が求められる。
山の上と下では気温差も激しいため、汗をかくと低体温症や脱水症状に陥りやすく、これまで何人もの途中棄権者を出している難コースだ。
「光ちゃん、ありがとう、行ってくるよ」
空木が襷を受け取る。
「芦ノ湖駐車場で待ってるからなっ!」(礼を言うのはこっちだよ)
そう言って空木を見送る。谺、光共に流れが悪い時にそれを振り出しに、いや好転させてくれるゲームチェンジャーの役目として、見事の一言。
空木の足は軽い。しかし気になるプレッシャーを後ろから感じている。それは……空木が出場した全国高校駅伝、3区の区間新記録を持つ教立大高山渓介。
この箱根駅伝5区は特別だ。山の区間で勝負が決まると言っても過言ではない総合優勝。以前は往路で大量の貯金を作り、そのまま逃げ切ることが、優勝へのオーソドックスな戦法だった。
往路優勝、5区はそのくらい価値があり、みんなが注目する区間。ここで結果を出せば人生を変えられる区間と言ってもいい。そのため、5区の距離が短くなった。
そして5区には特別な能力が必要とされる。特別な『適性』。
単純に坂ダッシュが速いだけでは、箱根の山では通用しない。1キロの上りで『よーいドン』で速いのとも違う。
一番大事なのは、きつくなった時にもう1歩、2歩粘れるかどうか、そのメンタルの強さ。足や心肺機能を高めていくのはもちろんだけれども、気持ちの強い選手が5区を走るのに適している。
もったいぶっておいて、その『適正』が他の区でも当たり前そうな『能力』。それでもこの当たり前がこの場面でできるかは圧倒的別次元の課題となる。