「あたしね、お姉ちゃんが箱根駅伝の夢は『弟たち』に託す、って言ったとき寂しかったんだ……。空木はお姉ちゃんの『弟』って認められたのに、あたしはお姉ちゃんの妹にはなれないんだって……あたしだけ仲間外れになったみたいで……」
千風は希の視線から逃れるように視線を落とした。希はそれでも千風から顔を逸らさないまま、どことなく緊張感が在った空気を緩めるようにフッと息を吐いた。
「空ちゃんは可愛くて本当の弟みたい。ほら、うちの家計ってせっかちじゃない? なんでもすぐやらないと気が済まないけど、空ちゃんんはほっこりするって言うか、何て言うかほっとけない感じ?」
「ちーちゃんは妹みたいに思ってたこともあったけど……今は違うかな?!」
その言葉に千風の顔が曇る。
「ちーちゃんはライバル! 選手としても女としても……」
今度は希の言葉に驚き、なんだか少し照れた。そしてとても嬉しく思った。しかし千風の口から出たのは真偽を確かめる言葉だった。
「ライバル……?」
「そ、憎きライバル」
そう言って希は宙に向かって微笑んだ。
例え自分ができなくても繋いだ誰かが成し遂げてくれる、途切れてしまわないように繋いでいく、だから諦めてはいけない。
自分でなきゃいけないことはない、いつかきっと誰かが果たしてくれると信じて……想いを続け、意志を残さなければならない、それが襷に託されている。
事例と意志は後進に継ぐ……千風だってまだ1年生だ。
恐らく希の想いは千風が繋いだ。そんな感覚が漂う。希は何だか肩の荷が下りた気がした。
残すは大学4年間の集大成、12月30日に行われる全日本大学女子選抜駅伝競走大会。新年を男子で箱根を飾るのなら、女子の箱根駅伝とも言うべき『富士山駅伝』が1年を締めくくる。
この参加資格は毎年10月最終日曜日、仙台市で開催されている大学女子駅伝日本一を決定する全日本大学女子駅伝対校選手権大会、通称『杜の都駅伝』での上位12チームが出場資格を得る。
しかし今年は『大学女子日本一』のチャンスを捨てて、箱根駅伝予選会に照準を合わせた。そのため来週に行われる杜の都駅伝にはエントリーしていない。それでも大会参加資格条件である『5,000メートル 7名の記録による10チーム』の枠に入れたのは、箱根駅伝を目指した賜物と言えた。
千風は希の視線から逃れるように視線を落とした。希はそれでも千風から顔を逸らさないまま、どことなく緊張感が在った空気を緩めるようにフッと息を吐いた。
「空ちゃんは可愛くて本当の弟みたい。ほら、うちの家計ってせっかちじゃない? なんでもすぐやらないと気が済まないけど、空ちゃんんはほっこりするって言うか、何て言うかほっとけない感じ?」
「ちーちゃんは妹みたいに思ってたこともあったけど……今は違うかな?!」
その言葉に千風の顔が曇る。
「ちーちゃんはライバル! 選手としても女としても……」
今度は希の言葉に驚き、なんだか少し照れた。そしてとても嬉しく思った。しかし千風の口から出たのは真偽を確かめる言葉だった。
「ライバル……?」
「そ、憎きライバル」
そう言って希は宙に向かって微笑んだ。
例え自分ができなくても繋いだ誰かが成し遂げてくれる、途切れてしまわないように繋いでいく、だから諦めてはいけない。
自分でなきゃいけないことはない、いつかきっと誰かが果たしてくれると信じて……想いを続け、意志を残さなければならない、それが襷に託されている。
事例と意志は後進に継ぐ……千風だってまだ1年生だ。
恐らく希の想いは千風が繋いだ。そんな感覚が漂う。希は何だか肩の荷が下りた気がした。
残すは大学4年間の集大成、12月30日に行われる全日本大学女子選抜駅伝競走大会。新年を男子で箱根を飾るのなら、女子の箱根駅伝とも言うべき『富士山駅伝』が1年を締めくくる。
この参加資格は毎年10月最終日曜日、仙台市で開催されている大学女子駅伝日本一を決定する全日本大学女子駅伝対校選手権大会、通称『杜の都駅伝』での上位12チームが出場資格を得る。
しかし今年は『大学女子日本一』のチャンスを捨てて、箱根駅伝予選会に照準を合わせた。そのため来週に行われる杜の都駅伝にはエントリーしていない。それでも大会参加資格条件である『5,000メートル 7名の記録による10チーム』の枠に入れたのは、箱根駅伝を目指した賜物と言えた。