「何で……」

 千風から零れ出る言葉。順位とタイムの発表は、10位の発表と共に明らかにそのテンションを落とした。しかしその後も淡々と発表は続いていく。

「最後に……聖和大……女子……オープン参加、記録……」
「何よ! オープン参加って!」

 千風が大声を上げる。壇上に上がって掴み掛る勢いだ。それを先輩たちが抑える。千風の目から涙が零れた。

「記録は10:37′09″」



「タイムだって10番以内じゃないっ! なのにっ! 何で?! どうしてよっ!」

 最後まで千風の言葉は会場を漂っていた。


 教立大学の選手たちが整列して全員が頭を下げた。それを見て千風は黙る。そして希は教立大に礼を返し拍手を向けた。
 名門日本中央大、神奈川国際大学等、名立たる大学も本戦行きを逃している。彼らも悔しさの堪え、教立、聖和に拍手で支えた。箱根駅伝を目指す者なら、希の活動を知らぬ者はいない。

 その光景をみて会場全体が拍手で揺れた。


 そしてここに希の夢と長い戦いは終わりを迎えた。