光は停学処分を受け入れた。1年間の試合出場謹慎処分も甘んじた。駿輔引退後のエースは谺が引き継ぎ、光はとうとう3年間で全国駅伝の1区を走ることはなかった。



 光と対照的に入部後の千風は上昇気流に乗った。

 千風の『すごいです』『さすがです』は、希の再来と言われた才能=千風が言うことで皆どんどん自信をつけていった。
 初め、紫乃以外はその言葉に拒否感があったのだが、千風の素直な反応、謙虚な態度、妹味が受け入れられチームの真ん中に存在するようになっていた。

 千風が入学した年の全国高校駅伝をあっさりと制した。その中で紫乃を含む3人が大学に進み希に力を貸している。
 しかし残念ながら後の2年間はメンバーに恵まれず、それ以降、都大路を走る千風の姿を見ることは叶わなかった。



 充実した3年間だったと思う。華々しく飾った全国駅伝デビュー。それと共に知った希の『箱根駅伝への再始動』。

 まだ諦めていたわけではなかった……。10人揃えば、夢が叶うかも知れない。

(あたしは聖和大へ行く。お姉ちゃんがきっと待ってる)

 1回こっきりしかない希と共演できるチャンス。それを信じて。