他方では希の挑戦が始まっていた、それは『箱根駅伝』性別の壁。

 聖和大は付属高校からの進学があるため、企業へ就職して実業団で続ける傾向の多い女子長距離界において、受験というブランクも少なく、他大学と比較したのなら、進学して続ける人材の確保の目星が付け易いメリットがある。


『箱根駅伝出場』の条件、『関東』はクリアしているし、その垣根は『100回記念大会』を皮切りに、一度でも例外を認めたのならそれを越えていくことは難しくない。問題は『男子』である条件、性別を覆すのは容易ではない。しかし何故『男子』なのか……それを紐解くことに箱根駅伝出場への道が見える。

 それは日程と時間。東京へ大静脈とも言える国道1号線を正月とはいえ制限していられるのには限界がある。男子だけで二日間の日程を必要とする。これを『女子の部』で更に二日間というのは現実的ではない。


 そして『繰り上げスタート』。

【往路では鶴見中継所:10分。戸塚中継所:10分。平塚中継所:15分。小田原中継所:15分。

 復路の中継所(全て):20分

 復路の繰り上げ一斉スタート=復路の最初、6区をスタートするとき。

 1位から10分以内の大学は、その時差に合わせてスタート
 10分を超えた大学は1位のスタートから10分後に同時スタート】


 これを考えた場合、箱根駅伝『女子の部』を創設したにもかかわらず、繰り上げスタート校の数が増えてしまうなら興ざめしてしまう。
 よって日程的にも時間的にも箱根駅伝『女子の部』を興すことはナンセンスである。


 キーワードは『34分』……交通事情を考えた場合、制限の限界がある、だからこそ男子においても【1月1日の申込期日前日までに各校エントリー者全員が10000メートル 34分以内のトラックでの公認記録を有していること】という条件が課せられている。

 つまりはこれが女子にも可能であるのなら、男子と同じ土俵に立てるのではないだろうか? 肉体的な差はあれど『性別』ではなく『タイム』で明瞭に隔るのであればチャンスはある。

 その条件は『内規第9条』にこうある。
【チームエントリーは10名以上16名以内で、区間エントリーのチーム編成は正選手10名と補欠選手6名以内である。ただし、留学生については、エントリー2名以内、出走1名以内に制限されている】と。


 つまりは最低10人、10000メートルを34分内で走れるものを揃えたのなら、箱根駅伝参加の扉が開くのではないのだろうか?