陸上競技部にとって全国高等学校総合体育大会(All Japan high school sports )夏の総合体育大会(インターハイ)も当然大事だが、駅伝のチャンピオンシップ(Inter-High School Championships)は冬の全国高校駅伝である。

 空木らの照準は全国高校駅伝である。希の走ったあの都大路を走る……そして調月煌司の記録を塗り替える、その先に箱根駅伝が待っている。



 100メートルなどに代表される短距離は陸上競技の花形とされることが多い、しかし長距離だって負けてはいない、一般的に短距離の方が才能を有している天才型、長距離の方が努力型の玄人好みのようなイメージが先行しているように思われる。

 スポーツ科学の世界では、走るためにエネルギーが何によって出されてるかで短距離と長距離を分ける。
 短距離の場合、身体が酸素を十分に利用できる前にレースが終わってしまう。このエネルギー源にグリコーゲンなどの糖を使うものを短距離走とする。
 一方、長距離の場合は酸素を十分に使い、このエネルギー源は脂肪である。



 長距離。その主な練習はジョギング、ペース走、インターバルトレーニング。

 その中で空木はこの高校に入ったときから長い距離をゆったりと走るLSDトレーニングを多く取り入れる。これは持久系筋肉を鍛えるのに効果的な練習。ゆっくりと、歩数を増やし、長い時間走ることによって、長時間走り続けるスタミナを鍛えることができ、登山に必要な『筋肉の有酸素能力の向上』や『脂肪を燃焼させてエネルギーにし易い体質』を作り上げる。
 持久力のトレーニングにて最大酸素摂取量と無酸素性作業閾値を向上させ、同じ呼吸のペースで筋肉へ酸素の供給を常人の3倍近くまでへと強化する。

 空木は自分の中に地図を持っている……将来(さき)を見据えた自分のやれるべき武器を身に着けるべく重ね上げていく。