1区10キロ、西京極⇒烏丸鞍馬口。

 前半は、わら天神前までの上り坂攻略がポイントとなり、後半は交差点を4ヶ所通るための位置取りやカーブの回り方なども重要視される。
 そしてこの区間を経験した選手が正月恒例の箱根駅伝で活躍するいわば登竜門とも言える。



 冬の空に号砲が響く。

 トラックを走るスタート直後約500メートルは勿論、五条通に出るまでの区間では集団が入り乱れ、転倒に注意が必要となる。各校共にエースを送り込んできている。
 それでも煌司には意に介さず、するりと集団から抜け出た。そしてそのままぶっちぎりで中継所へと飛び込んできた。



 周囲の期待通りに……いや期待以上の走りで煌司は圧勝する。そのタイム……26分28秒……。

 これは日本新記録、そして世界でも10本の指に入る大記録である。


 第1中継所……いつの間にやら移動していたのか、襷を渡した煌司を迎えるように希がタオルを手渡す。
 それが中継で流された。

 祝福する希。SNSでは速報と共に『調月選手(聖和高)の横を走れるのは大手選手(同聖和高)だけ?!』という見出しでクローズアップされたのを直ぐに谺が拾った。



「あれは……恋する女の顔ね……」

 1区の大きな大きなアドバンテージを得て、そのまま聖和大付属高校は優勝を飾った。