午後からは男子の部が始まる。応援していた空木たちの周囲は女性の観客が増えた気がする。
それは調月煌司の存在。彼もまた女子の部と同じく『エースの証』1区を走る。
主催である新聞社や毎年放送しているテレビ局などの関係者もフォーカスする。
「フン、何か面白くないね」
「まぁ光、彼の持つ大会記録を抜くことが来年からの目標になるんだから。お手並み拝見と行こうじゃない、な、うっちゃん?」
「俺も……希姉ちゃんと同じ1区を走りたいけど……」
「あ、お姉ちゃーん」
千風が希の姿に大きな声で呼びかける。しかし煌司と話しているからなのか、それとも周りの黄色い声やら音の塊りが遮っているからなのかその声は届かない。
「あの野郎、馴れ馴れしいな、肩に手なんか回しやがって」
「女好きってネットニュースに出てた」
「あれは、恋する女の顔ね……」
「…………」
千風の言葉に声も出せずに歯を食いしばりズボンを固く握る空木。
「……だとしたら希姉もシュミ悪いな」
「あら? 顔面偏差値は光より高いと思うわよ?」
「何だ、千風も悪趣味かっ」
「ちーちゃんは外見だけでは男を判断しないよ」
「そ、光ちゃんみたいにガサツな男はノーサンキュー」
千風はそう言ってペロッと舌を出す。その仕草を強い風が吹いて一瞬で隠してしまう。光は『チェッ』と呟いて横を向いた。
その不満は千風の言葉へなのか、風に対してなのか谺だけが理解した気がした。
千風は顔に被った髪を右手で左耳に掛ける、その仕草を谺もそっと見続けていた。
それは調月煌司の存在。彼もまた女子の部と同じく『エースの証』1区を走る。
主催である新聞社や毎年放送しているテレビ局などの関係者もフォーカスする。
「フン、何か面白くないね」
「まぁ光、彼の持つ大会記録を抜くことが来年からの目標になるんだから。お手並み拝見と行こうじゃない、な、うっちゃん?」
「俺も……希姉ちゃんと同じ1区を走りたいけど……」
「あ、お姉ちゃーん」
千風が希の姿に大きな声で呼びかける。しかし煌司と話しているからなのか、それとも周りの黄色い声やら音の塊りが遮っているからなのかその声は届かない。
「あの野郎、馴れ馴れしいな、肩に手なんか回しやがって」
「女好きってネットニュースに出てた」
「あれは、恋する女の顔ね……」
「…………」
千風の言葉に声も出せずに歯を食いしばりズボンを固く握る空木。
「……だとしたら希姉もシュミ悪いな」
「あら? 顔面偏差値は光より高いと思うわよ?」
「何だ、千風も悪趣味かっ」
「ちーちゃんは外見だけでは男を判断しないよ」
「そ、光ちゃんみたいにガサツな男はノーサンキュー」
千風はそう言ってペロッと舌を出す。その仕草を強い風が吹いて一瞬で隠してしまう。光は『チェッ』と呟いて横を向いた。
その不満は千風の言葉へなのか、風に対してなのか谺だけが理解した気がした。
千風は顔に被った髪を右手で左耳に掛ける、その仕草を谺もそっと見続けていた。