この3区から4区へと襷が繋がれる第3中継所を過ぎた北大路船岡山の手前登りで早希は失速した。いや金閣寺通りの右折から追い上げられていたのをこの登りで一気に詰められてしまった。そして登り切る頃には4位、下りでも膝に力が入らず順位を落としていく……。

 手の振りが律動してない、身体が左右に揺れる、呼吸が乱れる、血中酸素濃度が下がる、それらが内外から体力を奪う……顎が上がり早希の顔が苦痛に歪む。

 早希の視点が下がる、それもまたランナーとしてNG。二つ目の堀川北大路交差点を曲がる残り約1キロ地点……。そこには彼女の両親が応援していたのだが、本来『力に変える』声援が、悲鳴に変わった……。
 しかしそれさえも沿道の喝采たちが掻き消し、『頑張れ』『ファイトファイト』と駆り立てる。

 決して足を止めるわけにはいかない……。



 思えばレース前から普段より発汗量が多かった。早希は脱水症状に見舞われていた。
 それでも足をひきずるようにして中継所前に姿を見せる。もはや早希には視界もほぼ0、足も進まない状態。気力で襷をつなぐしかなかった。それでもトップと32秒差の11位で襷を託した。



 意識が戻り、救急車で運ばれたことに気付いた早希が襷の行方を見守るために再び会場に戻ってきたのは、最終区に襷が渡った後であった。