双子サークル、幼稚園、小学校とそのコミュニティの枠が広がれば広がる程、幼き環境が植え付けた『自信』が積極性や発信力となって差を表していく。

 午後は図書学習だった。この日は掃除が終わった帰りの会の前、10問漢字ミニテストがある。図書学習時間に光も普段見ない国語辞典なんて引っ張り出してくる。光は何かを夢中になって調べていた。
 それは……卑猥な単語だった。一つ調べるとまたそこに別の単語が出てくる。それをまた辞書で引く。芋づる式に次々にいやらしい言葉が出てくる。しかもご丁寧に、先人たちが丸で囲ってくれている。



 漢字テストが返される。成績の良い順に答案用紙が渡される。光は最後だった。

「先生、間違ってませんか?」
「いいえ、間違ってませんよ」
「だって丸が4つもあるのに」
「そうですね」
「島田君は丸が2つしかないですよ」
「そうね。でもね、光君は名前が間違っているもの」

 見ると『大手』の『手』の字が直されていた。『手』の横線が4本になっている。

「『手』は、1年生で習いますよ」
「『手』は指が5本あるんだから、全部で線が5本の方が合ってるじゃん」
「ちゃんと覚えましょうね、もう3年生なんだから」
「ちぇっ~……。島田、悪かったな」

 光が口を尖らせながら椅子を鳴らして座るとクラスに笑いが巻き上がる。
 光はチョンボを変える力を持っている、跳ね返す力を持っている。