「ごめんね、邪魔しちゃったね。先にどうぞ」

「あ…、はい。ありがとうございます」


軽く会釈をして、いよいよ那須川先生の本を手にする。

初めに引き抜いたのは、青色のカバーの『青の書』。


そのとき、隣から一瞬かすかな声が聞こえた気がした。


そばにはさっきの女の人。

待たせては悪いと思って、すぐさま『白の書』も引き抜いた。


ずっとずっと探し求めていた2冊がようやく僕の手の中に。

うれしさが込み上げ、緩みそうになる頬をなんとか保ち喜びを噛み締めていた。


すると――。


「あ…のっ……」


すぐそばから聞こえる、消え入りそうな声。

キョトンとして顔を上げると、さっきの女の人がこわばった表情で僕を見つめていた。


「…も、もしかしてなんだけど…。その本…、買うの…?」