「もう…、清夏さんには会えないのかと…」

「そんなわけないでしょ。小説と現実は違うんだから」


ヒロイン目線の『白の書』。

約束の場所で主人公がずっと待っていることを知りながら、ヒロインはその場に姿を見せることはなかった。


不思議なことに、僕と清夏さんの関係が『夏空の下、君を待つ』に出てくる2人にどことなく似ていて――。

この小説の中の主人公同様、僕もこのまま清夏さんに会えないままかと思っていたから…。


「涼太くんのおかげだよ。主人公みたいに待ってるだけじゃなくて、わたしのことを探しにきてくれたから」


僕は、これまでの人生ほとんど1人で。

1人で本を読むことが好きだった。


そこに、僕にとっては心地よい陽だまりのような清夏さんが現れて。

清夏さんだから、いっしょにいても自然体でいられた。