一瞬、息をするのも忘れてしまった。


なぜなら、僕しかいないこの病室に僕以外のもう1つの声が重なったから。


いや、正確には僕だけではない。

僕の他にいるのは…ずっと目を覚まさない清夏さん――。


「…もう。何度も聞かされたら、さすがにセリフだって覚えちゃうよ」


読んでいた青の書からゆっくりと視線をベッドに移すと、そこには僕に目を向けやさしく微笑む清夏さんが――。


「清…夏……さん…?」

「はぁい、清夏です。涼太くん」


ニッと笑って見せるその笑顔は、太陽みたいにまぶしく弾けていて――。

僕は思わず涙があふれ出した。


「…清夏さんっ、今までなにしてたんですかっ…」

「ごめんね、なんか寝すぎちゃってたみたいで」

「ほんと…そうですよ」


気づかれないように清夏さんに背を向けて涙を払うが、おそらく隠しきれてない。