すっかり意気消沈してしまった僕は、そそくさと青の書をカバンの中へ突っ込む。


『あ…、はい。僕は内海っていいます。内海涼太』

『涼太くんね!それじゃあ、また来週!』


どうしてあのときにコタロウさんの名前を聞かなかったのだろう。

また来週でいいやなんて、そんなのんきなことを考えていないで。


「…し、失礼します」


ペコッと受付の人に頭を下げて、その場を足早に立ち去った。


――そのとき。


「あの…!」


後ろから呼び止められた。

振り返ると、髪を後ろで1つに束ねた中年の女の人がいた。


「これ、落としましたよ」


僕のところへ駆け寄ってきた女の人の手には、青の書が握られていた。


おかしいな…。

さっきカバンに入れたと思ったけど、ちゃんと入っていなかったのか。