「申し訳ございませんが、それではお調べできませんので…」

「で、でも…!コタロウという名前は、その人が飼ってる柴犬の名前でっ…」

「はあ…」

「…これ!これと同じタイトルの本をその人も持ってるはずなんです…!」


僕はカバンから青の書を取り出し、何度も指を差しながら受付の人に訴えかける。


「青の書と白の書っていって、同じ作者が書いた対になってる小説で――」

「すみませんが、ここは病院ですのでもう少しお静かに…」


僕としたことが、必死さを表に出しすぎてしまっていた。

周りも何事だと呆然として僕のことを見ていた。


恥ずかしさに、顔を赤くしてうつむく。


「こちらとしましては、お名前がおわかりいただけなければお調べすることもできませんので…」

「…そうですよね。すみませんでした」